2022/04/13 12:06
こんにちは ギャラリーカフェmuniです。
今回は開催中の4月企画展示、作家fujiha(フジハ)さん個展「線と絵の具」について「読む個展」と題しまして、少し解説したいと思います。
fujihaさんは2016年から作家活動を始め、今年で6年目になります。商店街での手作り市へ出展したり、デザインフェスタに参加したりもしています。
2019年10月
デザインフェスタギャラリー原宿にてミニ個展「小さなこと」
2020年11月
muni
sunamamire×fujiha 2人展「水のある場所」
2022年3月
ピカレスクギャラリー「春の温泉×抽象画100人展」
など、他にmuniでの企画展示には何度も参加していただいている若い作家さんです。
様々な色の絵の具が折り重なった抽象的な作品と、軽やかに自由なラインで描かれたイラストの作品が揃った今回の個展は、暖かな春らしく優しい色合いに感じたり、情緒的で寂しく感じたり、見る人によって様々だと思います。たくさんの作品の中から今回は、fujihaさん自身が思い入れのある3作品をfujihaさんからのコメントも交えてご紹介致します。
「Like a human」
じっと動かず、穏やかに佇む魚のような生き物は、タイトルどおりどこか親近感が湧いてくるような表情をしています。この生き物のシリーズはfujihaさんが大学生の頃から描いていて、もう10年目くらいになるそうです。
fujiha:「この魚は卒業制作で作った絵本の中に出てくる魚でした。人間たちが住んでいた都市が海の中に沈んでしまった話で、人がいなくなった世界で新しく生まれた生き物として描いていました。こちらを見透かしているような、人間みたいな表情をする不思議な魚です。この魚を描くと不思議と落ち着くので頻繁に描くようになりました」
この生き物の表情もそうですが、この作品に使われているグリーンとピンクの色が癒しと愛情を感じさせ、見る人に安心感を与えてくれるのだと思います。
「Pink 体温」
fujiha:「ピンク色が好きなのでピンクの絵を自室に置きたいというシンプルな理由で描き始めました」
服やインテリアを選ぶときは自分が好きな色を選びますが、部屋に飾る絵を色で選ぶのもとても良いと思いました。fujihaさんは自身でお気に入りの作品を制作していく中で、楽しんで試行錯誤をしたそうです。
fujiha:「意外にのめり込んだ作品で、一年間少しずつゆっくり描いていました。当時、奈良美智さんの作品の薄く絵の具を重ねていく描き方に憧れて、アクリル絵の具を薄めたものを何度も重ねたり、所々パステルを使ってぼかしたり、一度紙やすりで削ってまた描いたり、色々なことを試しながら作っていきました。」
シンプルに見える作品ですが、様々なピンク色がそれぞれ違った温度を感じ、まるで生き物の体内にいるような温かな感覚になる作品です。
「あの日の女の子」
筆を思うままに自由に動かして描かれた作品です。水に溶けていくような水彩の淡い色が、女の子の寂しげな表情と合っています。
fujiha:「目を閉じている人の絵をよく描きます。これは自分の心と向き合う時に描いていると思います。何を描くか決めずに筆を自由に動かしながら描き始めます。無心で描ける気がして楽しいです。なんとなく元気のない時に気晴らしに描いている事が多いので、どちらかというと静かで寂しげな絵が多いかもしれません。」
大学生時代はデザインの勉強をし、明確なメッセージとターゲットを絞ったものを作ることをしていたfujihaさんですが、それが自分のスタイルと合わずに自由に絵を描くことを選んだそうです。
今回の個展も感情を表現したものが多く、それは見る人によって伝わり方も様々のようです。絵画はそういった、自身を開放する役割もあります。多くの作品を鑑賞していくと、鏡のように共感してしまう作品に出会えるかもしれません。