2022/06/03 09:23

こんにちは gallery cafe muniです。

6月に入り、これから雨の多い季節ということで、今回は水を使って描く「水彩画」について書いていこうと思います。
私自身、水彩画を描いた経験があまり無く、プロの作品というと油絵の方がよく見かけるため、水彩画についてはあまりわかっていない事に気がつきました。ただ水彩画の美しく淡い発色にはとても憧れがあるのです。
水彩画とはどんな作品で、どんな技法なのでしょうか。

「水彩って何?」
”水彩”とは水で溶かして使う絵の具のことです。水彩絵具の中には種類があり、大きく分けて”透明水彩”と”不透明水彩”があります。
一般的には水彩と言うと”透明水彩”を指し、”不透明水彩”はガッシュと呼ばれています。また、子供の教材で使われている水彩絵具は、濃く使用すれば不透明、水を多く使って薄めると透明性になる半透明水彩絵具と呼ばれています。
透明水彩と不透明水彩の違いは、顔料(色の成分)とアラビアゴム(糊の成分)の配合の違いで、透明水彩は顔料が少なくアラビアゴムの量を多くしているため下地の透過性が高まり、逆に顔料を多くしているガッシュは絵の具に光を通さないため不透明に見えます。
そのため透明水彩はたくさん塗り重ねずに明るくしたい部分を残しながら計画的に絵の具を塗っていく必要があります。難しく感じられますが、多めの水で溶いてぼかしたり滲ませたり、色と色の重なりでまた違う色が表現できたりと、多様な技法があるのも透明水彩の特徴です。不透明水彩のガッシュは油彩のように塗り重ねたり、乾いてから修正できたりします。

「水彩画の歴史と天才画家ターナー」
水で溶いた絵の具で絵を描くという方法は古くからあり、ヨーロッパでは旧石器時代から洞窟で描かれた作品が残っているそうです。その後、14〜16世紀のルネッサンス時代や18世紀からのロマン主義時代へ油彩画と並んで重宝され、19世紀のイギリスでは水彩画が最高峰とされました。何日も時間をかけて塗り重ねていく油絵と違って乾燥時間の短い水彩は野外スケッチに便利で、ありのままの美しさを写しとる写実的風景画はイギリス人の感性に合い、さらにその中の頂点となっていたのがJ.M.ウィリアム.ターナーでした。ターナーは油彩画家でもありましたが、若い頃から水彩画にも取り組み、単に写実的な作品ではなく柔らかな色彩と薄く何層にも重ねる「重色」と言う技法で、光や空気感を色彩で表現した作品を描きました。油彩の深みと水彩の透明感を生かした作品は当時は新しいものだったと思います。ちなみにターナーは日本の絵の具の会社名で使われています。

日本では明治時代に水彩絵具が輸入され、明治30年代後半のは「みづゑ」と呼ばれ大ブームとなったそうです。

「水彩画の注意点」
水に溶けやすい水彩画は、水の量を調節することで透明感を出したり、ぼかしやグラデーションにしたりと多くの技法を用いる事ができます。しかし油彩に比べると保存しにくいものでもあります。水に触れてしまうと滲んで絵が壊れてしまいますし、紫外線に当たると劣化してしまうこともあります。なので水彩画は額縁に入れ、日の当たらない場所や湿気の少ない場所に飾るなどの注意が必要です。
色が落ちることを防ぐ定着スプレーを使うのも良いでしょう。

「muniの水彩画作品紹介」
最後に、muni galleryで作品を展示していただいている作家さんの中にも水彩絵具を使っている方がいますので、何点かご紹介したいと思います。

「おもう」樋口広一郎

樋口さんの作品は水彩絵具をスポンジでぼかしながら描いていて、深い絵具の霧からぼんやりと形が見えてくる、とても世界観のある作品です。

「まなざし」田口淳子

田口さんは油彩や混合技法など様々な作品を描かれていますが、この作品は水彩とインクを合わせて余白と発色のセンスが活かされた作品となっています。

「めばえ咲く」こくぼあきこ

こくぼさんはグラデーションや配色で柔らかな表現が得意な作家さんです。水彩の透明感を活かして優しい雰囲気の画面になっています。

水彩画は誰でも気軽に始められる画材です。絵具も色の種類が多く、好きな色を選ぶ楽しみもあります。作品の見た目も美しく優しい印象のものが多いので、部屋に飾る時にとても合わせやすいと思います。国や年齢を問わず愛されるのも水彩画の魅力かもしれません。