2022/07/15 11:45

こんにちは muni galleryです。

今回は開催中の田口淳子さんの個展から私がおすすめする作品3点を、田口さんのコメントも添えてご紹介したいと思います。
田口さんは1978年 栃木県生まれ、2001年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。
muniの企画展示には何度も参加いただいていますが、それ以外でも
2016年 上野の森美術館大賞展 入選 など
2017年 個展 GALERIE SOL 銀座 など
2018年 冬の風景と花展 GALERIE SOL 銀座 など
2019年 第95回春陽展 入選 国立新美術館 など
2020年 春陽会選抜展 球の会展 都美術館 など
2021年 第98回春陽展 入選 国立新美術館 など
ここには全て書ききれないほど毎年様々な展示に参加、活動している作家さんです。
田口淳子さんのInstagramはこちら


いつも独特な世界観の作品ですが、今回の個展は1つの物語がベースとなっていて、1枚1枚不思議な登場人物と空間が広がり、楽しく、そして少し不気味な雰囲気の展示となっています。

「森の声を聴け」
1つ目にご紹介するのは今回の展示の物語の主人公と言えるこちらの作品です。
以前muniでの展示では鉛筆画で描いたものを新たに描き直した作品となっています。
月明かりなのか、ランプの炎の光なのか、子供の顔を照らす光が美しく、その分周りの空間の暗闇や影が強く見えてとてもドラマチックな演出となっています。頭からはえた羽は1枚1枚の艶感と羽ばたくための厚みと筋肉が正に鳥の羽です。細く長いまつ毛と大きな瞳は吸い込まれてしまいそうな魅力があります。

田口さんからのコメント
アイディアのベースの物語は、尊敬する宮崎駿監督の「もののけ姫」です。
もののけ姫は、"ヤマイヌに育てられた少女"ですが、
私の作品は"鳥に育てられた少女"として描いています。
巨大な鳥なのでしょうね(笑)
自分を鳥だと信じて疑わず育っていたけれど、兄弟や親と姿かたちが違うとある日気づく。
ココは自分の場所ではない、自分の居場所を探さなきゃ、という場面です。
画面内の手がコワイ!ですね。これは誰の手でしょうか?
作品を見る方に自由に想像していただけると嬉しいです。
画面を見ているコチラが、逆に少女に見られているような、ドキリとする印象的な目を描きたいと思いました。
それを引き立てる為、背景にドラマチックな光を構成して描いています。
別の鉛筆画の作品「しあわせの日々」は、この少女の幼少の頃のイメージで描いています。


「人魚の棲む処」
今回の展示で一番大きな作品です。
人魚姫の世界観で描かれたこの作品は、画面全体のブルーの色がとても美しく、このブルー、グレー、グリーンなどの複雑で深みのある海の表現は宝石のように画面の場所によって違った魅力を感じられ、更に人魚の体に映った水面の光、鱗1枚1枚の透明感など細かい描写が、見れば見るほど引き込まれてしまう作品となっています。こちらはぜひ実物を見ていただきたい作品です。

田口さんからのコメント
人魚姫は恋愛のお話のように思われていると思うのですが、私は"憧れる気持ち"のお話だと思っています。
焦がれて焦がれて叶わない。
悲しいようですが、そこまで一心に何かに憧れ、行動したという強さが、私は好きです。
そんな人魚姫の強く美しい姿を描きたいと思い表現しました。
水中にいる感じを出したくて、展示1週間前に画面全体にグリーンブルーを一層重ね、印象をガラリと変えました。
人魚姫の強さが私に力を貸してくれたのかもしれません(笑)


「どちらかは男の子」
最後は、今回何点かある鉛筆画の中から妖しい世界観が田口さんの作品らしいこちらを選びました。
白黒の世界がよりいっそう現実から離れた雰囲気を感じさせます。
サーカス小屋の舞台に立つ双子の髪の毛が浮かんでいるような動きがあり、足元にはなぜかリュウグウノツカイが静かに漂っていて、双子に纏った空間だけがこことは違う別のどこかにあるような、、少年と少女はどちらがどちらでも成立してしまうような、、この秩序のない感じや、小さな枠の中に様々なことを想像してしまう不思議さが私はお気に入りです。
鉛筆は描き方によってマットな色になったり、鋭く光るような表現が出たりします。この作品では唇と髪の毛と衣服を見比べるとよくわかります。

田口さんからのコメント

具体的なベースの物語はないのですが、サーカス(見世物小屋)で働く双子の兄妹のお話のイメージです。
孤独で無垢な彼らは、言われるがまま見世物として働いています。
美しい兄妹は、お客受けするナースやメイドの格好をさせられています。
彼らは世間を知らず、力も知恵もなく、逆らうことを知りません。
いつか逃げ出したいと思いながらも、あくどい大人にこき使われる毎日。
「自分たちには何もできない」「他の場所ではやっていけない」と信じ込まされています。
しかしながら、いつか気づきます。
自分たちには生きる力があり、大変魅力があり、外の世界でもやっていける、と。
彼らは思い切って逃げ出すのです。美しく逞しく己の道を切り拓いていくのでしょう。
というようなことを徒然なるままに考えながら描いた作品。
グリム童話やアリスなど色々な物語の要素が脳内で混ざりあって描いた作品です。
幻想的な雰囲気を出したくて、舞台の上にリュウグウノツカイを泳がせてみました。
どうやって泳いでいるのでしょうね(笑)
絵の世界の自由さに遊ばせてもらっております。


今回は沢山ある作品の中から3点を選ばせていただきました。1枚の中に見どころが万歳で、圧倒されてしまう作品ばかりです。
この3点以外にも、見れば見るほど目が離せなくなるような作品がたくさんあります。
展示は7月24日まで。オンラインショップにて全ての作品が閲覧、購入できます。
ぜひご覧ください。

埼玉県蓮田市閏戸1808

営業日:土曜、日曜

13時〜18時(ラストオーダー17時半)

お問い合わせ municafe.as@gmail.com

オンラインショップ

https://www.munigallerycafeshop.site/