2022/07/20 11:39

こんにちは 今回は7月の展示で個展をしていただいた田口淳子さんの作品制作に使われている技法「混合技法」について解説したいと思います。

前回のブログ田口淳子さんおすすすめ作品3点のご紹介 はこちら


田口さんの作品を実際に近くで見てみると、細部までとてもリアルに表現されていて、画面全体は筆跡が無いので印象的な艶感があります。
油彩だけではこのような表現はとてもできません。どんな絵具を使ってどのように描いているのでしょうか?

「混合技法 テンペラとアキーラ」
混合技法とは油彩とテンペラを併用して描く技法のことです。
テンペラとは顔料と卵黄を水で溶いた絵具で、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」や、レオナルドダヴィンチの「受胎告知」
など有名な西洋絵画作品に使われている古典技法です。テンペラ絵の具はぼかすことは出来ないので、細かい線の重なりでグラデーションを表現したりします。そのため細かい表現には向いている絵の具と言えます。しかし、下地や絵の具を手作りしなくてはいけないのと、卵黄を使用しているためすぐに腐ってしまい、冷蔵庫に入れたり保存に気を遣うので、手間のかかる絵の具ではあります。ただ、テンペラは水に溶いて使用する水性の絵具ですが、卵黄を使っているため分離することなく油性の画面に定着することが可能になります。そのため油絵との併用が可能なのです。
田口さんは混合技法にテンペラではなく、テンペラと同じ性質を持った「アキーラ」という絵の具を使っています。アキーラはアクリル樹脂と油の特性を両方兼ね備えた「水性アルキド樹脂」を使用していて、油絵具、透明水彩など様々な絵の具に塗り重ねることができます。発色が良く金属やガラスにも直接描くことができます。テンペラと比べると腐ったりもせず、チューブから出てくる絵の具なのでとても使いやすいですね。
クサカベ アキーラについて

「混合技法の作業工程」
では実際にどのように描いているのか工程を説明していきます。
まず支持体(石膏地など)に赤味、黄色味を帯びた土性絵の具を塗ります。そこへ下描きをした後白起こしをします。白起こしは白色のテンペラ(アキーラ)を使って描き込んでいく作業です。明るい部分になる所を白で描いていきます。次に油絵具で固有色をのせていき、更に上からテンペラ(アキーラ)で細かい表現を加筆していきます。この時油絵具が適度に生乾きでないと弾いてしまって細い線が描けないので注意が必要です。さらにたたき筆で表面の筆跡を消していくと、このような美しい画面になります!
「秘密の日記帳」田口淳子

あまり聞き馴染みのない「混合技法」ですが、実際にこの技法で描かれた作品を見ると油彩だけの作品とは違った、リアルで繊細な表現に興味が湧きます。田口さん自身、この技法によって表現したかったことが実現したり、西洋絵画を見た時に「どうやって描いたかわかる!」と感動したそうです。みなさんも美術作品を見た時に「美しい」「すごい!」と感じるだけでなく、どんな材料を使ってどのように制作したのかがわかると違った見方ができてさらに面白くなると思います。

田口淳子 個展 2022年7月24日まで

埼玉県蓮田市閏戸1808

営業日:土曜、日曜

13時〜18時(ラストオーダー17時半)

お問い合わせ municafe.as@gmail.com

オンラインショップ

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