2022/10/12 15:23

こんにちは muni galleryです。

今回は、現在開催中の佐々木環美さんの個展「reflect」よりおすすめ作品3点をご紹介したいと思います。
佐々木環美さんは1977年静岡県生まれ 2001年武蔵野美術大学日本画学科卒業、最近の個展では2010年 「春咲」(Gallery +Antique shop 蟻)、2012年「returns to beginning」(Art space 88)など、大学在学中から様々なアート活動をしている作家さんです。
近年の佐々木さんの作品は、淡い色彩の重なり、グラデーションが印象的です。今回の個展では、そんな色彩美しいタブロー(絵画)と線と色を巧みに表現したドローイングの作品が揃っています。

「Night of Woods」

こちらの作品は今回の展示の絵画の中でメインとなる作品です。
水彩紙に岩絵具と松煙墨、水彩絵具で描かれています。佐々木さんはガラスに着色したものを砕いた新岩絵具と天然の岩絵具の両方を使っていて、発色の良い新岩絵具を主に使用し、独特な深みのある色を出す天然の岩絵具を仕上げに使用しているそうです。実際に近くで画面を見ると岩の粒でキラキラしているのがわかります。
そして松煙墨とは松の枝や皮を燃やして煤を採煙し、膠(にかわ)、水などと混ぜられた墨で、この墨の色を活かし、画面に空間ができるように意識して使用しているそうです。
佐々木さんは昼間の賑やかな芝生の広場の木が、夜になって静かに佇み、木が休憩しているような場面をイメージしてこの作品を描いたそうです。葉の鬱蒼としているところ、地面の湿潤な青の色がご自身で気に入っているとのことでした。
私はこの作品の静けさが好きです。木の佇まいと深みのある色の中に心地よい光と木の青い香りを感じ、風の音だけが聞こえてくるような気がします。木の葉や地面の複雑な色や前に出てくる鮮やかな色と、墨の色の定着している安定感が効果的だと思います。

次にドローイング作品を2点ご紹介します。


このようなドローイング作品を描くようになったきっかけは、絵画を描くとき、佐々木さんは膠(にかわ、日本画に使用する岩絵具を画面に定着させるための接着剤で、水で溶かしたものを使用する)を薄く使うのがクセで、絵の具が定着せず、色を重ねるのが苦手でした。それならばと手数を少なく短時間で完成に持っていけるようになるためのトレーニングとしてクロッキー会に行き始めたそうです。

作品に書かれているこの数字は描いた時の日付や時間で、最後の「10m」とは10分で描いているという意味です。他のドローイング作品にも同じように数字が書かれていて、10分や5分で人体の形を捉え着色もしています。
佐々木さんは鉛筆での線だけでなく、水彩絵具を使って面の表現も入れています。色をのせるかのせないかもその時の感覚だそうです。
前回のブログで書いたように、https://www.munigallerycafeshop.site/blog/2022/10/06/103012
短時間の中で佐々木さんの感覚を画面で表現している作品です。
そして自由に世界を描ける絵画作品とは違い、「形を捉える」という作業をしているドローイングは作品としてどういったことを意識しているのかお聞きすると、描いているモデルの纏っている印象を含めた空間を描いているとのことでした。なのでモデルの方によって「絵」になるかどうか決まる部分もあるそうです。
人の「形」を追うだけでなく、画面の見え方、着色する部分、モデルの雰囲気とその空間を佐々木さんの感覚で表現することでドローイング作品となっています。急に強い色で着色された部分や、線に迷いが無いところを見つけると、その時の佐々木さんのテンションが伝わってくるような気がして面白いと思いました。

今回の個展のタイトル「reflect」は「映す」という意味です。「光があたって物の姿が現れる」、目を通して意識の中を通ったもの、頭に浮かんだものを画面に写し、またそれを意識する。その循環が今回の展示では見ることができます。

佐々木環美さん個展「reflect」は10月23日まで

muni
埼玉県蓮田市閏戸1808
営業日:土曜、日曜
13時〜17時 (ラストオーダー16時半)
お問い合わせ  municafe.as@gmail.com
オンラインショップ